モナリザ以上の素晴らしさ
2010.04.02
かつて現代を代表した美術評論家、最高の権威を誇った具眼の人・河北倫明氏は、箱根の成川美術館をお忍びで訪れて、その現代日本画をじっくりと見て回るとともに、大展望室のパノラマに目を休めてから、「この箱根富士の絶景は、ルーブル美術館の『モナ・リザ』以上にすばらしい」と語ったという。一枚の名画や人工的な美観ではなく、四季折々、日々刻々と変化していく箱根の景観美は、一期一会の二度と繰り返しがきかない大自然の眺望である。元箱根を見下ろすその景観美は、遊覧船や舟人と共にある芦ノ湖や富士の表情が、朝霧の中で、雲間と共に、青空を背景に、陽光のきらめきと一緒に、留まること無くと千変万化していく。瞬間、瞬間の借景は、日本美のありかを無言のうちに語りかけている、もう一つの偉大な「移ろいゆく美」である。
世界の至宝「モナ・リザ」の美を凌駕する箱根の景観を幸いにも備える当館は、現代日本画を展観するにふさわしい最良の舞台を持つ。奇しくも河北氏はそのことを語っていたのであろう。