現代日本画に見る桜の表現
2009.03.17
現代日本画の桜表現は、巨木といわれる岐阜の淡墨桜、臥龍桜、山梨の神代桜、福島の滝桜などを中心に、生命感あふれる優美な捉え方に特徴があります。西行法師を敷衍した妖艶な桜、仏画や曼荼羅を思わせる桜、散り際の優美さなどもありますが、以前の淡白で比較的地味な山桜から、現代では花のウエーブが全山を覆うようなむんむんとした染井吉野の爛満桜へと進化を遂げ、千年桜を謳歌する天真爛漫さが際立ってきたようです。また、桜前線とともに春の風物詩となった満開の桜を堪能する展観は、日本の桜文化の厚みに思いを馳せる貴重な機会です。木葉之咲哉姫を祭神とする富士浅間神社は、桜と富士の相性の良さを伝えます。神話世界以来の精神文化を湛えた桜の日本画を、箱根富士の景観の中で見るのは特別な機会です。「星河流麗(久遠の桜)」の屏風他、圭吾桜(木村圭吾)を中心に、稗田一穂、近藤弘明、山本丘人、毛利武彦、平松礼二、岡信孝などの秀作を、春爛満の季節に全身で感じる一期一会の展観とは、美の結晶との出会い、小さな奇跡そのものでしょう。(学芸部)