絢爛豪華な関口芸術
2008.12.15
現在、美術館で大追悼展を開催中の関口雄揮画伯は、美術館開館以来、最も人気のある画家の一人でした。北海道を描く「北の旅人」として知られた関口雄揮の初心は、戦後すぐのパリ留学にありました。第1回文部省公費留学生として、日本画家でありながら、パリの美術研究所で裸婦デッサンなどに明け暮れた若き日の研鑽が、後年の関口芸術の基礎となっています。異邦人・関口雄揮のパリ彷徨の日々は、画家自身によってひそかに、当時の時代相を映すデッサン集「冬のパリ」(第1〜6集・全47枚)としてタトウにまとめられていました。今回再発見されたこの写生の数々は、本来、洋画風の線を生かしたデッサンと、パステルカラーの柔らかい色彩を画芯に持つ画家が、その色感を一旦封印して、北海道の厳冬に挑戦したことを示しています。画伯の勤勉さと意志力、そしてその平明さと造形性は、私たちの時代の大いなる成果です。今展覧会で、個性が際立つその全画業を振り返ることは、戦後の日本が歩んだ豊穣への道程をも振り返る貴重な機会と言えるでしょう。(学芸部)