2012年「日中国民交流友好年」認定!牛尾武『空海の空と海』展の意義
2012.03.23
現在当館で開催中の牛尾武『空海の空と海』展は、外務省の2012年「日中国民交流友好年」の認定行事に選ばれました。牛尾武の意義深い重要な仕事の重みが、公式に認められたことになります。
現代日本画家・牛尾武は、小説家・司馬遼太郎の名著『空海の風景』に触発されながら、空海の生きた時代と今日の風景とを繋げる絵画の冒険へと21世紀の幕開けとともに出発しました。
2004年に発表された第1回展では、若き日の空海の精神を育んだ色彩を生命の芽吹きの色ともいえる白緑にたとえて空海生誕の地である四国を描き、つづく2007年の第2回展では、入唐前夜、憧れの地・中国へ旅立つ空海の青春時代を群青にたとえて大陸への出発点となる九州を描きました。
2009年に発表された第3回展では、赤岸鎮へ漂着後、南船北馬の末、大都長安での充実の留学生活を送った空海の黄金時代の熱気を今に残す中国大陸が舞台になっています。
来年2013年には第4回展の拡大版となる京都・奈良編、2015年には最終展となる高野山編が予定されています。また、この『空海の空と海』展が完結したあかつきには、中国での展覧会と帰朝展を現在計画中です。
空海が日本に伝えた両界曼荼羅・密教は、中国本家ではその後途絶してしまい、チベット仏教(密教)以外は残っていません。真言(ことだま)の密教として独創的に発展させられた空海の純粋密教は、1200年余の時空を超えて、現代になってから中国大陸へと里帰りしています。
日本と中国の長い文化交流の記念碑である空海の業績を踏まえて、牛尾武がライフワークとして積み上げてきた風景画の数々には、画人の誠実な目と心とが投影され、澄んだ形と色彩に文化の香り高い日本絵画の願いが込められています。一衣帯水の両国の友好が、空と海に託されているのです。(写真は牛尾武「大唐渡海」)