山本丘人が愛した「ニゴちゃん」
2012.06.27
現在、当館で開催中の「巨匠が描く動物たち」では、山本丘人の「正月元旦」を展示中です。夏なのにお正月の絵?と思われる人もいるかもしれません。しかし本作は風景画を描くことが多かった丘人の数少ない動物が主役の作品であり、それも自分の忠犬を描いた愛情あふれる一作なのです。
マルチーズとおぼしきこの白い犬の名前は「ニゴちゃん」といいます。その顔がちょっと人間的で不思議な愛嬌ある表情をしています。丘人はとてもよくこの座敷犬をかわいがり、犬も画人になついていました。お正月のお供えのお餅と並べていることからも丘人の愛犬への愛情が伝わってきます。そしてほぼ赤・黒・白の色調で統一された横長の画面構成は、今見てもちっとも古臭さを感じさせないとても瀟洒でモダンな作品です。
是非会場で画面を見ながらゆっくりと左右に歩いてみてください。きっと「ニゴちゃん」があなたの視線を追っていつまでも見続けていることでしょう。丘人と愛犬との親密さがあなたに乗り移ってしまう余韻深い名作だと思われます。(写真は山本丘人「正月元旦」)