速水御舟の傑作「名樹散椿」に現代の名匠・牧進が挑んだ渾身の大作
2011.12.20
椿の大樹を描いた傑作として名高い速水御舟の「名樹散椿」(重要文化財・山種美術館蔵)に、現代花鳥画の名匠・牧進が挑んだのが、現在当館で展観中の「再喜樹宴」です。名作と比較されるのを嫌い、現代画家で近代巨匠の作品と同じ主題や構成で描く画家は少なく、まさに「挑む」という表現がぴったりの本作は、長さ12メートルにも及ぶ超大作となっています。
いまを盛りに咲き誇る真紅の椿の花と、椿樹に咲いた花がその使命を終えて落下した鮮烈な散椿に、生と死という二つの時間を取り入れつつ、現実にはありえないほど枝幹を長く垂らした大胆な画面構成は、和風の立体表現をなしており、プラチナ箔を張りめぐらせた豪華な背景は、ハレの空間を一層引き立たせ、堂々とした幹枝の大樹の墨彩と、緑の葉、そして朱色を刺した椿が画面全体を引き締めています。
春宵の花宴を満開の椿と椿散とによって表現した、タイトルにある通りの繰り返しが季節の喜びを祈念する、まさに現代日本画最高の椿図といっても過言ではないでしょう。