【今週の1点】齋 正機「満開ニ走ル」
2013.03.01
「桃源郷とは何だろうか。いつでも行きたい風景、そしていつまでもいたい風景...。苦にならない程度の風が吹き、動くものは、小走りすれば追いつけるぐらい。過不足なく様々な色があり、息を吸い込めば穂のかな匂い。そんな情景が桃源郷だろうか。」(文・齋 正機)
齋 正機(さい まさき)は1966年福島県福島市生まれ、東京芸術大学日本画専攻卒業、同大学院を修了し、2003年には洋画界の登竜門とされる昭和会賞を日本画家として初めて受賞するという異色の経歴の持ち主です。
齋の日本画は、一見すると童画風で柔らかな印象ですが、実は構図や配色などが見事に計算され尽くしています。現在の作風に辿り着く前に抽象画を描いていたため、その時に得た造形性が背景にあるからです。また、のどかな里山や田園風景といった郷愁を誘う風景画にもかかわらず、決して古びれない現代人にフィットする感性を持っています。
齋 正機の日本画は、今まで見たことのないまったく新しいものであると同時に、奇抜ではない正統の新しさ、そんなことを感じさせてくれる作家なのです。