【今週の1点】黒光茂明「土に咲く」
2013.03.07
今回紹介する作家・黒光茂明は、日本画家・黒光茂樹の次男として京都で生まれ育ちました。
父親の茂樹は16歳の時に故郷の愛媛を出て単身京都に向かい、金島桂華、福田平八郎の両氏に師事し、戦前から一貫して帝展、日展を舞台に活躍して、その審査員を務める傍ら、花鳥や大地に向き合って自然界の命を表現し続けました。
そんな父親の背中を見て育った黒光茂明は京都市立芸術大学日本画科を卒業後、京都画壇の正統派として活躍し、今日の京都日本画壇のリーダーとしての役目を果たしながら活動を続けています。今年、父親の茂樹氏と同じく京都府文化賞功労賞を受賞しました。
本作では落花した椿が、あたかも地面の上で野の花のように咲いています。純白の花弁はいまだ黄色の花芯が鮮やかです。多数の花びらが土に還っていく季節の変わり目にあって、最期の花の輝きを発見したような新しい花鳥画の捉え方といえます。足下を見つめた風景画は、花たちの浄土でしょうか。
*是非実物を見に会場へいらしてください。