【今週の1点】山本丘人「地上風韻」
2013.04.19
「藤棚が冬の陽を明るく受けて、硝子戸に写った朝の影から意図した。藤の花は五月の薫りを送ってくる。春過ぎて輝く季節、風にゆらぐ紫の花。」(文・山本丘人)
第2回創画展出品作である本作は、丘人後期の、甘美で抒情性あふれる心象風景を描いた代表作品のひとつです。「冬の陽」と丘人の説明にあるように、あたたかな陽ざしの降りそそぐ冬の朝に、初夏の庭の満開の藤棚を想像して描かれた本作は、咲き誇る藤棚の下、白いドレスを纏った黒髪の女性が椅子に座って虚空を見つめています。強く鮮やかに描かれた花の存在に対し、後ろ姿の女性はどこか夢の中の人物のように儚げであり、優雅で不思議な趣をもった丘人の心象風景の世界が展開されているといえます。
*是非実物を見に美術館へいらしてください。