【今週の1点】山本丘人「残春」
2013.03.22
「庭内の八重桜は桜花を誇る。去り往く春の名残り。」(文・山本丘人)
本作は、奥村土牛、中川一政、岡鹿之助、山本丘人の4人のグループ展「雨晴会」の第16回展に発表されました。
横長の画面いっぱいに張り出した枝先には、ぼんぼりのようにぽってりとした八重桜が満開に咲いており、一部はらはらと花びらが舞い散り始めた様子が描かれています。樹の幹が何本か途中ですぱっと伐られていますが、樹幹の意外な切断と歪曲とが、活気のある今日の美へと転化しており、この作家ならではの現代性がさりげなくしめされています。そして、背後の楓のような緑の灌木と、瀟洒な薄暗い虚空間が潔く怪しいまでの桜の幽玄美を醸し出しています。とても深い味わいのある幻想的な桜の絶品と言える作品でしょう。
是非実物を見に美術館へいらしてください。